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ACT3-1=宮廷礼拝堂
戴冠式が華やかにかつ厳かに執り行われる。グレゴリウス枢機卿の手によって聖油を拝領した皇太子ジークフリードは、神の御名のもとに新皇帝として認められる。
ACT3-2=宮廷「皇帝の間」
新皇帝ジークフリードは万民の祝福を受けながら王座に座る。心の内ではオデットを待ち望む想いが徐々に強まっており、ベンノを先頭にして祝賀バレエが踊られてもその群衆の中にオデットの姿を追い求めている。見つけられないと知ると「今晩のうちに婚儀を済ませることはさすがに無理か」と考え「政務が一段落した頃に日を改めて再びあの『銀の森』に赴いてオデットを救おう」と思う。やがて宮廷舞踊が始まり、新皇帝に拝謁すべく各国の使節も到着し、その国の王女も踊りに加わるので場は一層華やぐ。ジークフリードも踊りに加わるが「オデットが来るのではないか」と淡い期待を捨てきれない。
「列国の王女のうちの誰かを妃に進んでくれるとよいのだが」とマリアが内心望んでいると、その場を乱すかのようにだしぬけなファンファーレと共に、ロットバルトに連れられた王女オディールが公女オデットに瓜二つの姿で現れる。その姿には怪しい魅力があり、ジークフリードばかりでなく誰もが目を見張る。オディールは昨夜の馴れ初めを思い起こさせるようにその様子を再び演じてみせ、ジークフリードは昨夜のオデットとは別の不可思議な美しさを見いだす。

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各国王女とオディールとがパ・ド・シス(6人の踊り)で舞い競うと、居並ぶ人までもオディールの虜となる。周囲の注目を浴びながら立ち上がったジークフリードは、オディールの手をとってグラン・パ・ド・ドゥを踊る。
踊り終えたジークフリードは「すぐさま婚儀を始めたい」と言うので一同は慌てる。ジークフリードは「実はこの姫君には昨夜あるところで出会ったのだが、そのとき既に、私がこの国を統べて治めていくにあたってその伴侶として私を助け得るのはこの人をおいて他にない、と感じ取っていた。だから皇妃にはこの人をおいていないと考えている。母上をはじめとして皆が私とこの国とのために、今日この場で様々な国の王女と引き合わせてくれたことには、心から感謝している。しかし私とこの国とのために、いかなる姫君がふさわしいか、この判断を私が自ら下してしまうことも、これからは許されても然るべきではないのか」と問う。答えに詰まる一同を尻目にロットバルトは「そのとおり、ぜひともこの場で御婚礼を成し遂げなさいませ」とけしかける。ジークフリードはオディールに対する自らの愛を神に誓い、皇妃として戴冠させてしまう。

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ちょうどその瞬間、城内に閃光が走り、「銀の森」の結界を懸命に破って飛んで来たオデットが、必死の力で人間の姿に戻って現れる。たった今自分が愛を神に誓った女性が、自分が真に愛する女性ではなかった、という驚きにうたれたジークフリードが我を失うー方で、昨夜誓われたばかりの愛を裏切られて救いの道を断たれたオデットは悲しみの瞳をジークフリードに向ける。
ロットバルトは、ジークフリードをしてオデットへの愛の誓いを欺かしめる企みこそ成就したものの、もうひとつの狙いであったこの豊かな国は、オデットの出現によって乗っ取り損ねてしまった。怒った彼はオデットを「銀の森」へと弾き飛ばし、自らも消え去る。
ロットバルトの分身たちは後に残され、近衛兵たちと揉み合う。マリアは怯みもせずにジークフリードに問う「オデットを救うのもロットバルトを倒すのも、あなたにしかできないこと。これが新皇帝の初仕事となった今、命を賭してでもこれに挑むべきではないか」。ジークフリードは、オデットの飛び去

 

 

 

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